SoudanNFT blog【法律】対談
話題の「NFTホワイトペーパー(案)」について、落合弁護士に意見を伺います
- 「NFTホワイトペーパー」自分で読むのメンドクサイ
- 読んだけどよくわからないから解説して欲しい
- NFTを仕事にするのが夢
- DAOを職場にするのが夢
- リビール仕様のNFTを作りたいけど「賭博罪」がコワイ
こんな人にとって有益な記事です。
「NFTホワイトペーパー(案)」は国内省庁、あるいは法律の専門家の間でも、今まさに議論中の内容です。
今回、落合弁護士に語っていただく内容は、確定事項ではありません。
「一人の法律家が、NFTホワイトペーパーをこう読んだ」という趣旨の内容であることを御了承ください。
この記事の登場人物
【専門家】
名前:落合一樹
職業:弁護士
補足:ゲームが好き。逆転裁判をやっていたら、気が付くと弁護士になっていた
リンク:
Twitter
【インタビュアー】
名前:仮想筋肉
職業:SoudanNFT 代表
リンク:Twitter
資料

先日発表された資料のリンクです
この内容に沿って話を進めます
▷リンク:NFTホワイトペーパー(案)概要版
▷リンク:NFTホワイトペーパー(案)
解説・対談
SoudanNFTと落合一樹先生
仮想筋肉:弁護士の落合先生に来ていただきました。
大きな弁護士事務所に所属する法律家の方がこういった場に足を運んでいただき、国内NFT界隈の足固めをしてくれているというのは本当にありがたいです。本日はよろしくお願いします。
落合一樹:ゲーム業界に精通していることから、ITや技術的な分野に紐づく分野の仕事をすることが多いです。その流れで、NFT・ブロックチェーンに関する法分野も専門に扱っております。
今日はNFTクリエイターや事業者さん側の意見を聞けることを楽しみにしています。よろしくお願いします。
NFTホワイトペーパーについて意見・解説

落合一樹:始めにNFTホワイトペーパー(案)が出てきた背景についてです。
- すごく簡単に言うと、世界中でNFTビジネスが流行し・世界との競争が始まっているが日本の対応は大丈夫ですか?という趣旨の政策提言です
- 「このままだと日本が出遅れてしまいますよ」という危機感から生まれた内容であると想像します
- 実際に、事業者の方だけでなく、議員の方からNFTに関するご相談も増えていました
- WEB3.0・ブロックチェーン・NFTに対する知識が増えてきたところで、ホワイトペーパー(案)という形で発表されたものと考えられます
① 国家戦略の策定・推進体制の構築
NFTホワイトペーパー(案) 記載内容
【問題の所在】
1. Web3.0時代を見据えた国家戦略の策定・推進体制が無い。また、官公庁に相談や規制緩和要望を行う、統一窓口がない
【提言】
Web3.0やNFTを新しい資本主義の成長の柱に位置付け、Web3.0担当大臣を置き、経済政策の推進、諸外国との連携の司令塔とすべき。省庁横断の相談窓口を置くべき
落合一樹:「どの省庁が管理監督するのか?」を明確にすることで、ビジネスの”やって良い・悪い”を統一的に判断してくれる問い合わせ先・官庁を決めるべきだ、という趣旨の内容と理解しています。
基本的には、こういった分野に明るい金融庁が担当するのではないかと思われますが、NFTビジネス専門の特別な機関を設ける可能性もあります。あるいはデジタル庁も候補に挙がるかなと思います。いずれにしても「国としての管理体制を決めてください」という内容の提言だと思います。
アメリカなど諸外国ではNFTビジネスが進んでいる以上、この辺りの整備が進んでいる事が想像出来ます。
国内でもこれが決まるとビジネスはスムーズに進みます。具体的には、実現したいビジネスの是非を「xx庁に確認すれば良いですね」といった流れが出来上がる為です。
現状でも「グレーゾーン解消制度」という、経済産業省を通じてビジネスの是非について問い合わせを行う制度があります。しかしながらNFTビジネスにおいては解答出来る官庁がどこか分からない為、この制度を使いにくいのが現状です。
NFTに当てはめて考えると、ジェネレーティブNFTなどで話題に上がる事が多い賭博罪が規定される「刑法」は法務省の管轄です。先ほど挙げた金融庁等と所管する分野が異なる部分もあり、1つの官庁で全てを管理・解決するという体制にはならないことが予想されます。
② NFTビジネスの発展に必要な施策
NFTホワイトペーパー(案) 記載内容
【問題の所在】
2. ランダム型販売と二次流通市場を組み合わせたNFTビジネスの賭博罪該当性が懸念されている
【提言】
賭博罪の成否につき、関係省庁から事前に見解を求めることができる仕組みを整備すべき。少なくとも一定の事業形態が賭博に該当しないことを関係省庁から明確に示すべき
賭博の考え方とランダム型NFTについて
落合一樹:現行刑法は明治時代に成立したものであり、賭博罪も古い法律となっています。
条文では「賭博をした者は、五十万円以下の罰金又は科料に処する」となっています。記載内容がシンプル過ぎて「賭博をすると罰金です」としか書いてないに等しいので「賭博とは何だ?」という部分の抽象度が高く曖昧・不明確なものとなっています。
賭博に詳しい専門家・法律家もほとんどいないのが現状です。
ランダム型販売のNFTに対しては「射幸性(ギャンブル性)が高くて、かつ、ボラティリティ(値動きの幅・大きさ)が高い」という理由から、「賭博に該当するのではないか?」「原則賭博に当たる」という議論が多くされてきました。しかしながら、日本のゲーム業界ではガチャの仕組みがありこれを賭博とする議論は現状ほとんどありません。これが許されていて、NFTのランダム販売がダメな理由が整理されていないと思い、賭博について深堀して調べることが多くなりました。
なお、海外ではガチャはいわゆるルートボックスに当たるとして規制されている例もあります。
落合一樹:仮想筋肉さんや皆さんに聞きたいのですが、NFT事業者の立場から見ても、「ランダム型NFTは賭博に該当する」という雰囲気がありますか?
仮想筋肉:そうですね。今はだいぶ雰囲気が一変していますが、以前は「リビール型のNFTは賭博だ」という雰囲気は蔓延していたと思います。
SoudanNFTとしては法律を確認した上で問題ないと判断して”Love Addicted Girls”の販売を行いましたが、例えば、おにぎりまんさんのジェネレーティブNFT販売では、ランダム型NFTなのにどれを購入するか選べる様な仕組みが導入されており、賭博罪に該当する可能性を下げようと苦労してシステムを作ったんだろうなという印象を持ったことを覚えています。
落合一樹:賭博とは『偶然の事情』に関して財物の得喪を争う行為であるとされています。このうちの前半部分「偶然の事情によって財産の増減がある」という点だけにフォーカスして「NFTは賭博だ」とされる風潮があって、ここに違和感がありました。
本来大切なのは「得喪を争うかどうか」つまり、「一方が得をして、一方が損をする関係かどうか」であり、ランダム型NFTが誰と誰との間において「得」と「喪失」をもたらしているかどうかという点だと思うのです。
実際、つい最近までは法律家の間でもランダム型NFTは精緻な議論のないまま賭博に該当するという主張が多数派でしたが、今年の3月~4月頭以降、ようやく「得喪を争うかどうか」を重要視する議論が活発に行われる様になってきました。
関係省庁から事前に見解を求めることができる仕組み
仮想筋肉:日本の素晴らしいコンテンツを世界に発信していくべきこの機会に、互いに足の引っ張り合いをするのではなく、省庁とNFT事業者が一体となって議論を前に進めようとしてくれている姿勢が見えることが嬉しいですね。
落合一樹:そうですね。特に「関係省庁から事前に見解を求めることができる仕組みを整備すべき」という提言内容については驚きました。実現したら法律家の立場からもとてもありがたいプランです。
今までは刑法について、この様な問い合わせ対応に正面から応じてくれる省庁がありませんでした。問い合わせが出来ない上に、違反した場合は懲役・罰金などの刑罰となってしまうので、法律家から事業者に対するアドバイスも保守的なものにならざるを得ませんでした。これが改善するとなると、ビジネスに積極性やスピード感が出てくることは容易に想像が出来ます。
法律家・事業者の双方にとってありがたい制度になる事が予想されます!期待しています!
一定の事業形態に対する言及
落合一樹:提言の後半部分「少なくとも一定の事業形態が賭博に該当しないことを関係省庁から明確に示すべき」は、少しトーンが変わった言い回しになっている印象です。
これは、刑法の文言上では形式的に賭博罪に該当することになったとしても、他の法律で特定のビジネスを正当業務行為として認めるべきといった趣旨の提言だという風にも読めます。
正当業務行為として認めるとは、例えば「金融デリバティブ取引」の様に偶然の事情に応じて財物の得喪が発生する商品を取り扱う事業、つまり賭博と解釈し得る事業であっても、法令上、一定の場合に当該事業を行うことが認められる場合や、社会通念上、正当と認められる業務上の行為と認められるような場合をいいます。
この場合、賭博罪に該当し得るNFT事業に関しても、例えば届け出制になるとかライセンス制になると言った様な規制の対象になり、その結果として、業法に従うかぎり適法と解される可能性はありますね。
NFTクリエイターがジェネレーティブNFTを作る時に気を付けたいポイント
仮想筋肉:「ランダム型のNFT販売をしたい」と考えているNFTクリエイターやNFT事業者の方がいらっしゃると思うのですが、賭博に該当するかどうかの線引きをする方法はありますか?
落合一樹:ポイントは偶然・財物・得喪です
「偶然の事情によって一方が得をして、一方が損をする関係にあるか否か」という観点に当てはめて考えるしかありません。
極端な例を考えるとわかりやすいです。
100円のガチャガチャについて考えてみましょう。
95%の確立で50円、5%の確立で10000円の現金が出るガチャガチャがあったとします。
偶然については、ガチャガチャを回して、ランダムで排出されるので偶然性が認められることになると考えられます。
財物については、現金は当然財物に該当すると考えられます。
得喪については、ガチャガチャを設置した人と、購入した人の間で現金による利益移転が発生する。つまり、一方が得をして一方が損をすることが明確なので得喪があると考えられます。
こう考えると、100円で50円か10000円の現金が出てくるガチャガチャを設置する行為は賭博に該当すると考えられます。
NFTプロジェクトのスキーム(計画・コンセプト)設計がポイント
落合一樹:100円ガチャガチャの様な考え方を、NFTにも当てはめて考えたいところではあるものの、デジタルデータのNFTをそのままあてはめて判断することは難しいというのが実情ではあります。例えばNFTの場合、客観的な価値の算定が難しかったり、事業者かNFT購入者にどのような利益の移転が生じているのか、一義的に判断できません。
仮想筋肉:ランダム型のNFTを作る時に「得喪の有無」をチェックする方法はありますか?
落合一樹:商品・プロジェクトとしてのスキーム(計画・コンセプト)について考えることが大切です。
例えば、暗号資産にあたるNFTであれば、それらは現金と同等の性質を持つとみなされるので現金が出てくるガチャガチャと同じように考えることができます。
一方で、絵画・アートを主目的としたNFTや、排出されるNFTのレアリティや排出率にかかわらず、均質なサービス提供を受けられるようなユーティリティを有するNFTに関しては「得喪を争う」関係は観念しにくいのではないかと考えられます。
落合一樹:あとは価格についても議論の対象になります。プライマリー(一次販売)価格はもちろん、セカンダリー(二次販売)価格も含めて議論するというのが現状主流の考え方です。
ただし、セカンダリーマーケットの値段をそのまま得喪の議論に当てはめることができるのか、という議論も活発になってきています。
例えば0.03ETHで大量にプライマリー販売されたNFTがあったとします。
その中の、とある一つのNFTが1ETHでセカンダリー販売されたとしましょう。
このケースにおいて、事業者は損をしたのかというと、損も得もしていないという結論になると思います。
他方、とある一つのNFTが0.03ETH未満でセカンダリー販売されたとしましょう。その場合であっても、事業者の取り分は変わらないので、損も得もしていないといえます。
なので、事業者がセカンダリーマーケットに直接関わる事が出来ない形態であれば、これに得喪を当てはめるというのは無理があるのではないか、と個人的には感じています。
また事業者はセカンダリーで発行するNFTの価格がどの程度変動するかを判別できません。
そのため、実質的には対応が不可能という現象が生じることとなります。
例えば、ハズレとされている個体でも「有名人が保有した」ことで価値が上がるといった事例もあります。個人的には、法的安定性が保ちにくい事からも得喪の議論にセカンダリーマーケットの値段を含めるべきではないと感じています。
賭博に該当しそうなNFTの商品設計
落合一樹:ランダムに排出されるNFTにおいて、事業者側が「価格差がある事を前提に提供している」様なケースは良くないです。例えばアタリは0.1ETH、ハズレは0.01ETHの価値である事を念頭に置いて商品設計をしている様な場合は賭博に該当する可能性があります。
仮想筋肉:なるほど。
アタリのNFTではDiscordにアクセスできるけど、ハズレだとアクセス出来ないみたいな、機能に差をつける様なケースも良くなさそうですね。
時間切れ!雑談!!!

仮想筋肉:6つの提言を一通り読み合わせるつもりでしたが、2つ目の途中までしか行けませんでした!また次回もお願いします。
落合一樹:是非!よろしくお願いします。
仮想筋肉:今回最後の質問です。答えるのが難しい質問かもしれませんが・・・
・・・
・・・
「好きな食べ物何ですか?」
落合一樹:法的根拠を持った解答は難しいので個人の見解でよろしいですか?
「ハンバーグです」次いでカレーライス、オムライスです。
仮想筋肉:「落合先生はハンバーグが好き!」拡散!!!
落合一樹:子供みたいで恥ずかしい(*’ω’*)
威厳を保ちたいので記事では「馬刺し」に差し替えてもらって良いですか?
仮想筋肉:なんでやねん(-ω-)/
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